
魅せられて
第1章 依頼
「とりあえずデッサンは最初は描くという作業より、モデル、つまりなのかさんとの信頼関係の方が大事だからね。」
西寺社長は言った。
「アトリエに伺えばいいんですね」
「そうだね。アトリエに来てもらって、僕の描く絵の雰囲気をまず知ってもらうことから始めます」
「そうですね」
「それじゃ、とりあえず、来週の日曜の午後に来てくれますか?」
「はい。一時過ぎには行けると思います」
会社での仕事がない日曜。
なのかに簡単な地図を書いて説明をした。
町の郊外にあるマンションだ。
「あとはスマホで検索してもらえれば」
「わかりました」
「じゃ あの絵はなのかさんをモデルに描くってこと?」
齋藤夫人は聴く。
「あの絵って?」
「実はね。小板橋さん齋藤夫人から頼まれた絵があるんです」
「何を描くんです?」
「若い女性が佇んでいる絵なんです。それで君を……」
「私がモデルになるんですか?」
「モデルという約束だから、そりゃあそうでしょう」 齋藤夫人がいった。
「じゃあ アトリエに来て下さい 気楽な感じで」
「はい わかりました」
