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僕はアノ音を聞いてしまった。

第6章 野田恭子

 眩しい光の玉が淳也の瞼の裏で弾けたような気がした。背筋を駆け上がる電流で、全身の産毛が立ち上がるような感じに身体をよじる。力が一気に抜ける。
 
 淳也は唇を噛み、見開いた目を固く閉ざした。
 
「あっ、ああ……ノダキョー……ううんっ……」
 
 淳也の身体の奥が破裂したかのようだった。何かを吐き出したそれは心臓の音に合わせたかのように脈動し、搾りだすように徐々に弱まってゆく。また背筋に震えのようなものが駆け上がった。魂が抜けたかのような痺れに包まれる。
 
 うっ、ああ……。ノダキョー、ノダキョー。
 
「きゃッ。淳也ッ……」と、恭子が叫ぶ声がした。冷たい粘り気が密着している淳也と恭子の下腹に広がっていた。プールに入れる塩素の臭気によく似た草をむしったときのような蒼い匂いが漂うような気がした。
 痛い程に膨れ上がっていたペニスが窄んでゆく。それは空気が抜けてゆく風船のようだった。

 うっ、ああ、うっ、うっ……、あっ、……ああ……。ウン……。
 
 五秒、十秒と淳也の痙攣は収まらなかった。

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