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インターセックス

第2章 性差別の始まり

 僕は、車を降りて涼子の後ろを付いて施設の玄関に入る。
広い玄関は、右側に受付の窓口がある。その受付のガラス越しに職員たちの事務机と書類ロッカーが見える。
玄関左側には、スチール製の下駄箱が並んでいる。正面は、段差で少し高くなっている。
受付の前で涼子が立ち止まり中を覗くが誰もいない。
「ごめんください!」涼子が大きな声で呼ぶ。
静まり返った施設内。玄関から横に続く通路の奥から返事が聞こえる。
「はーい。ちょっとお待ち下さい」
まもなく玄関に中年の女性が現れる。
「あー、おまたせしました」
「申し訳ありません。夜分遅くなってしまい」涼子が申し訳無さそうに頭を下げる。
涼子の後ろに隠れるように立っていた僕は、女性の顔を上目遣いで見ながら軽く会釈する。
「この子が先程電話で、お話した夏音くんです」
涼子が僕の背中を押して前に出させる。
「まあ、可愛い子だこと。私ここの施設を預かる張本 浅子です。よろしくね」
「夏音くん。この人がここの施設長さんよ。張本さんは、とても優しくて頼りになる人よ」
「かのんちゃん、今日は、疲れたでしょ。色々あって。今日は、とりあえずお部屋用意したから」
「……」僕は、どう挨拶して良いのか分からなかった。空腹と不安が胸をよぎり何かを考える余裕なんてなかった。
涼子が心配そうに僕を見ている。
「夏音くん、お腹すいた?」
「うん……」頷く僕。
「ごめんなさいね、おにぎりしか用意できなくて。お部屋におにぎりあるから食べて休んでね」申し訳無さそうに張本さんが言う。
「夏音くん、今日は、遅いからこのまま帰るけど、後は、施設長さんにお願いしておいたから、しばらくの間ここで頑張るのよ」
頷く僕。
「さあ、あがって」僕の前に張本さんがスリッパを揃える。
靴を脱いで上に上がる。
「では、施設長、後は、よろしくお願いします」
涼子は、僕の頭に手をやって笑顔を浮かべてる。
「後は、お任せください。ご苦労さまでした」張本さんが頭を深々と下げる。
「夏音くん、頑張るのよ」
涼子は、振り向きながら手をふり玄関を出ていく。
「さあ、お部屋に案内するわね」
僕は、張本さんの後をついていく。

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