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インターセックス

第2章 性差別の始まり

 その後、施設内の談話室に通された。
事務机にパイプ椅子の殺風景な部屋だった。そこに座って待っていると張本さんと若い男性の職員が入って来た。
僕の合い向かいに座った職員がおもむろに書類をテーブルに置き何か書き始めた。
「この方は、児童指導員の山村さん。この施設で子供たちをお世話している職員さんよ」と張本さんが紹介する。
「どうも、山村 隆史です。よろしく」
「じゃあ、早速なんだけど立花さんの今までの生い立ちの事を聞きたいんだけどいい?」
「生い立ちですか。それって生まれた時からのこと?」
「まず、生年月日から教えてくれる」
そこから話すのかと思いつつ昔の事を覚えている範囲で話し始めた。
僕が話し始めると山村さんが話の内容をメモしている。
一通りの事をざっくりと話し終えると張本さんが聞いてきた。
「で、夏音ちゃんは、虐待とかされたことがあるの」
「虐待?……」
何を言っているの解らなかった。
「例えば、殴られたりとか」
殴られた事は、確かにあると言うか日常の出来事だった。
体に緊張が走る、それは、話すと父が責められるような気がした。
父がその事で犯罪者のように思われる。そんな思いで気が動転してしまった。
「たまに…… だけど、僕が悪いことをしたからしょうがないんだ」
「近所の人のお話だと毎日のように殴られていたって聞いてるんだけど」
「毎日じゃないし、お父さんは、悪くない。」
本当は、心のなかでは、父を恨んでいた。母を追い出した張本人だからだ。でも、たった一人の肉親である父に対する思いは、消えない。
「お父さんを事をかばっているのね。やさしいのね夏音ちゃんて」
「お父さんだし。僕には、大事なお父さんだし……」
「わかるわ、大事よねお父さん。でもね夏音ちゃんに、これ以上悲しい思いをさせたくないのよ」

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