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インターセックス

第2章 性差別の始まり

 こうして養護施設で暮らし始めた僕。
張本さんから転校の知らせが僕に届いたのは、間もなくのことだった。
転校する小学校は、僕の体の事情を話して女子として受け入れてくれた。
養護施設内で僕は、女子として紹介されていたので、だれも僕の本当の姿は、知らない。
転校の知らせを受けた張本さんが少女を連れて僕の所にやってきた。
「夏音ちゃん。転校先の学校が決まったわ。明日からこの子と一緒に登校してください」
張本さんの脇に、僕と同じくらいの少女が立っている。
「私、中居 春香。夏音ちゃんと同じクラスよ。よろしくね」
「あ、僕、立花かのん。あぁ、間違えた、わたし」慌ててしまった。
自分がこれから女子として振る舞うには、「僕」を使わない事にしようと決心していたのだが自然に出てしまう。
「ふふ、変な子」春香が笑いながら僕を見ている。

 翌日、春香に連れられて小学校へ登校した。
不安を抱えながら学校生活がはじまった。徐々に友だちも増え、いたって普通の小学生になっていた。
周りで、僕のことを男子だと言うことは、誰も知らない。疑う子もいなかった。
当然の事なのだが6年生に成ってからほとんど学校に行っていなかった僕は、授業について行けなかった。
僕の頭の悪さ加減に呆れた春香が夜、勉強を教えに部屋にやってきていた。
そんな、ある日の夜の事。机の脇に丸イスを持ってきて宿題を教えてくれる春香が聞いてくる。
「ねえ、夏音。どうして夏音ちゃんは、一人部屋なの?」
「一人部屋? んーわかんない」
「他の子は、だいたい一部屋に4人よ。高校生になると一人部屋になるけど小学生は、皆な同じ部屋なのに」
「あー、ごめん。僕そう言う事よくわからない」
本当は、施設職員の人達が僕を気遣ってこの部屋を使わせてくれているのだ。
「ねえ、夏音。お風呂入ろ。一緒に」
「だめ、そういうの。だめ!」
冷や汗が出る。だめなのだ、そんな事したら体の秘密がすぐバレる。
施設のお風呂は、男女別で3人位入れる大きめの浴槽だ。通常夕方6時から8時までが入浴時間と定められている。
しかし僕は、施設の計らいで特別に8時以降が許されている。その事を誰も知らない。

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