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インターセックス

第10章 無口な私

「私、家が遠いのよ。で、夜道歩きたくないし」
「そうか、夜道苦手なの?」
「ちょっと、色々あってね。夜は、歩きたくない」
「家は、どの辺なの?」
「秘密」
「秘密? 何だか謎に満ちてるね」
「そう言う事を詮索されたくないのよ」
「ごめん。色々詮索するようなこと言って。僕さ松戸なんだけど」
「じゃあ、松戸までは、同じ電車ね」
「そっかー、じゃあ松戸までは、一緒に帰れるね」
「うん。でさあ、お願いがあるんだけど」
「何?」
「できれば話しかけないで」
「えーっ、そんな。どうしてだよ? いいじゃん、少しくらい話しても」
「……」
「冷たい奴だな」
「……」
「マジかよ」

 学校からの最寄り駅は、北千住駅だった。
ほぼ無言の私の横に隆一が横を並んで付いてくる。

 暫く歩くと北千住駅に着いた。早足で来たので少し早く着いてしまった。
通勤時間帯は、とても混雑するので帰りの電車は、できるだけ5時前に乗車するようにしている。

 その日の電車内は、比較的空いていて座席に座ることが出来た。
私に付きまとう隆一は、他に席が空いているのに私の前に立っている。
相変わらず無愛想な私に話しかけてくる隆一。
「ねえ、川谷さん。もうすぐ 夏休みだけど、休みは、どうするの」
「バイト」
答えてしまった。無視を貫こうと思ったが、もうそれ自体がめんどくさい。
「バイトって何するの?」
「福井に親戚が居てね、その親戚が旅館をやってるの。そこの手伝い」

 福井県は、私の母の出身地だ。私の母が、最後を迎えた実家が福井県の坂井市にあると聞いていた。
しかし、その実家も祖父母が亡くなり今は、ない。
 川谷家の養子になる際に戸籍を調べて親戚が福井県に居ることがわかった。
その親戚が旅館を経営しており今年は、母の墓参りを兼ねて旅館にアルバイトに行く事になっている。

「へー福井県か。確かそこって東尋坊とかで有名な所だよね」

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