テキストサイズ

インターセックス

第11章 信頼

「夏音ちゃん。ご飯まだやろ。積もる話は、あるんやけど今日は、疲れたやろ。下の食堂に賄いあるから、温かいうちに、はよたべ」
そお言って女将は、階段を降りていく。

 肩から下げたリュックを下ろし部屋の隅に置く。部屋の隅には、送ってあった荷物のダンボールが置かれていた。
「川谷さん、東京から?」と椎名さんが聞いてきた。
「その先の千葉なんですけど」
「千葉なの、それは大変だったわね。飛行機、電車?」
「飛行機は、この時期チケットが取れなくて。高いし」
「じゃあ、電車なのね。時間掛かったでしょ」
「そうですね。お昼前に出てこの時間ですから」
時計を見ると8時を回っていた。
「とりあえず。ご飯食べてからお風呂行こう」
「ありがとうございます」

 こうして、ここで働くことになった。
 アルバイトは、朝6時に起床してお客の朝ごはんの用意。その後、合間を見て賄いを食べる。
忙しい時には、立ったまま食べることもある。お客が帰ると部屋の掃除と布団片付け。
それが終わると夕方までお休みだ。私と椎名さんは、その時間勉強に勤しむ。
椎名さんは、福井の大学で看護学科に通っている大学生だ。
8月は、ピーク時とあって毎日忙しい。
一日があっという間に過ぎていく。

 毎日が新鮮な事に感じる。今までの生活が別世界に思える。
大変な事もあるが変化に富んだ日常は、私の心を癒やしてくれる。
仕事が終わり勉強を済ませるとそっと隠れるようにお風呂に入り11頃就寝する。
 椎名さんも同じ時間に就寝する。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ