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インターセックス

第15章 初恋

 お昼になり白石さんとの約束が迫ったが隆一くんには、話せないでいた。
「そうだ、ゆいに相談してみよう」そう思ったのだがゆいは、いない。
いつもなら、お弁当を一緒に並んで食べるのだが教室を見渡してもいない。
朝の件で怒らせてしまったので避けているのだと思った。

 お弁当もほとんど喉を通らず食べ残してしまった。
昼休み隆一くんに声をかける。
「隆一くん。ちょっと話があるんだけど」
「何?」
「あのさー、無理にとは、言わないんだけどさ」
「何?」
「白石さんがさー、隆一くんと話がしたいって言ってんだけど、どうする?」
「どうって? 話ぐらいならいいけど」
「そう…… 今さ、理科の準備室で待ってる、白石さんが」
「そうなの? 何か改まって話でもあるのかな?」
「いいのよ。無理に行かなくって」
「えっ、何言ってんの? 別に無理じゃないし…… もしかして俺に告るって事?」
「連れていくて約束しちゃったのよ。ごめん! とりあえず行くだけ行って。お願いします」
白石さんには、弱みを握られているので面目位は、立てておかないと、そう思った。
「しかたねーな、じゃあ行くだけ行ってみるけど、白石さんじゃあなー……」

 理科の準備室に行くと電気がついていない。
カーテンが閉ざされ暗くなっていたので電気を点ける。
「あれ? まだ来ていないのかな」
その時カーテンの裏に白石さんが隠れているとは、想像もしていなかった。
「なんだ白石さんまだ来てないのか。じゃ、帰ろうかな」
「ちょっと、待ってよ。すぐ来るかも知れないじゃない」
「だってさ、俺、白石さんに興味無いし。夏音ちゃんなら付き合ってもいいけど」
「私と……」
言葉を失ってしまった。
私も付き合いたいと言えばいいのに言えない。
それは、過去の苦い思い出がよみがえるからだ。
前の学校で川崎哲也と付き合った時の事件を思い出す。
その事が未だトラウマになっている。
「私なんかやめておいた方がいいよ。隆一くんも知っての通りの体だし後悔するわよ」
「何でそんな事言うの。夏音は、かのんでしょ。僕は、人として好きなんだよ」
「私なんて、人に愛される資格なんてないのよ。この体の事で今までさんざん泣いてきたわ。誰にも言えず友達にも裏切られて、その度に消えて無くなりたいって思って生きてきたのよ。わかる? この気持」

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