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インターセックス

第16章 東尋坊からの再出発 (最終章)

 ああ、最悪。どうしたら良いんだ。
色々なことが頭を駆け巡る。
ゆいの事、隆一への思い、私の体の事。
何をどうしたら解決できるのか。
今のこの状態からどうやったら抜け出せるのか。
私がこの世から消え去れば解決するのか。

 悩みながら駅に向かって歩いている私に隆一が声を掛けてくる。
「よお、夏音ちゃん。一緒に帰ろう」
よりによってこんな時に、白石さんに見られたら大変だ。
「……」
返事もしないで早足になる。
「どうしたの? 何かあったの?」
早歩きをする私に必死に付いてくる隆一。
「ごめん、一人にしておいて」
そう言うのがやっとだった。
隆一は、諦めたように速度を落とす。
「どうしっちゃったんだよ夏音」
その時の私は、前の高校でのいやな思いが蘇っていた。
SNSでの誹謗中傷の拡散は、私の心を蝕んでいた。
スマホの電源を切ることしか考えられなかった。
 
 疲れていたのだろうか頭痛がする。
帰宅した私は、鎮痛剤を飲むと力なくベットに倒れ込むように寝てしまった。
 何時間寝たのだろうか、目が覚めると、まだ回りは薄暗い。
時計を見ると5時だった。
机の上には、ラップされたおにぎりが置いてあった。
スマホの電源を入れてみる。
画面が開くと着信のメッセージとメールがいっぱい来ている。
見ると、ほとんどが隆一とすばるからだった。
隆一「夏音、心配している。すばるちゃんも心配してるよ。何があっても僕は、夏音の味方だよ。困ったことがあったら何でも相談して」
すばる「先輩! 心配です。何度電話しても出てくれないし。メール返信ください」

 私を心配してくれる隆一とすばるの思いが身にしみる。
こんな私でも心配してくれる人がいる。
幼い頃は、友達も居なく一人で部屋の隅で泣いていた。
孤独だった。道端の隅で石ころのように風景に溶け込み誰もその存在自体を気に留めない、それが自分だと思いこんでいた。
でも、今は、違う。こんなに心配してくれる人がいる。
そう思うと自分が人なんだと認識できる。
誰かが、気にしてくれる人間なんだと。
 少し勇気が湧いてきた。
どうなるか解らないけど一つずつ解決していこう。
そう決意した。

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