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女子高生香織の痴漢列車

第2章 慰めと目覚め:トイレにて

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」

 はしたなく脚を広げたままぐったりと放心していた香織は、何度も何度も荒い息をついていた。
 じんわりと暖かな満足感が全身を包んでいる。彼女は目を閉じて、呼吸が落ち着くのを待った。

 しばらくして息を整えた香織はトイレから立ち上がった。いつのまにか便座もびしょびしょに濡れていて、脚との間に溜まっていた液体がたらりと太ももを垂れてくる。
 それをトイレットペーパーで拭った香織は、ひどく濡れた床を目にして苦笑いした。

(すごい、わたしが漏らしちゃったのでこんなに濡れるんだ……)

 ひとまずは体育着を着てしまい、そのまま立ち去るわけにもいかないので自分が汚した箇所の掃除を始める。
 濡れた便座はトイレットペーパーで一度拭き、その後水拭きをする。床は、便器の正面の壁際に何故か置きっぱなしだったバケツやモップなどの掃除道具を使ってきれいにした。

「ふぅ……」

 一仕事を終え、香織は満足げに息を吐いた。
 バケツとモップを元の場所に戻す。と、その時モップの先が壁際を走るパイプに当たってしまった。

 カタッ……。

 パイプの影から消しゴムほどの大きさの、小さく黒い立体物が転がり出てくる。しかし達成感に身を包まれる香織がそれに気づくことはなかった。

「ふふふん、ふ、ふっふ、ふんふ〜」

 香織は鼻歌を歌いながら、手を洗い、荷物をまとめ、多目的トイレを出て行った。


 香織が去ったトイレ。中に人はいないが、人感センサー式の灯りはまだ点いている。
 その灯りがフッと消えた。トイレが暗闇に包まれる。

 ギィィィィイイ……。

 香織が去った僅か数分後、耳障りな音を響かせながら多目的トイレのドアがスライドする。逆光に小太りのシルエットが映し出される。センサーが反応し、蛍光灯が寒々しい光を投げかけた。

 その光が再び消えた時、転がり出てきた黒い物体はトイレの床から消え失せていた。

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