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女子高生香織の痴漢列車

第3章 囚われの

 キーンコーンカーンコーン……。

 日が傾きつつある空の下、終業のチャイムが校舎に響く。
 お勤めから解放された生徒たちのざわめき声で満たされた教室。
 香織がカバンに荷物を詰めていると玲奈が近寄ってきた。

「んじゃ、あたし部活行ってくるね!」

「うん、頑張って!」

 挨拶を交わすと、ひらひらと手を振りながら去っていく。
 帰る用意が終わった香織も席を立ち、学校を後にする。

 バス、電車と乗り物を変え、いつもの駅で降りた。夕陽が照らす街は綺麗なオレンジ色に染まっていた。
 駅からの道は人がまばらだった。いつものことであるが、駅前から続く通りでさえもほとんど人がいない。
 はじめこそこの物哀しさが苦手だった香織も、毎日のことなのでもうすっかり慣れていた。
 香織は右に折れ、脇道に入った。古い商店街を抜けていくこの道は、香織の家へとショートカットできるルートだった。
 昔は客で賑わっていたであろう商店街も、時代の流れによる大型ショッピングモールの攻勢によってすっかり衰退している。9割がたシャッター街と化している商店街には香織以外誰もおらず、しんと静まり返っていた。

 コツコツ、コツコツ、コツコツ、コツコツ……。

 シャッターに反射した足音が響き、香織の足音が二重に聞こえる。
 その時、強めの風が吹いてスカートを揺らした。思わず身を震わせる。

「うー、ちょっと寒いなぁ。急いで帰ろう……」

 小さくつぶやき、香織は足を早めた。

 コツ、ココツ、コツコツ、コッコツ、コツ……。

 リズムの変わった足音が商店街をこだまする。
 はじめは何も考えずに歩いていた香織は、やがてある違和感にとらわれて足を止めた。

 コツ、コツ、コツ、コツ……。

 しかし足音は止まらない。すぐ後ろから聞こえてくる。
 そして聞こえていた足音も香織の背後でピタリと止まった。

(え? 誰? わたしが立ち止まったから止まったの? じゃあわたしの後をつけてきたわけ?)

 ゆらりと恐怖が首をもたげる。その恐怖にじわじわと身を犯されながら、香織はゆっくりと振り向いた。
 ウネウネとした癖毛を脂でテカらせながら薄暗い商店街に立っていたのは、香織と同じ高校の制服を着た、小太りの男子生徒だった。

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