エイリアンの女
第1章 碓氷峠
マッハのヘッドライトを照らし、ライダーを探す。バイクから二メートル離れた山肌にへばりつくように人が倒れていた。真琴はそばへ駆け寄った。倒れたライダーの片足が変な形に曲がっている。かなりの骨折だ。きっと、ぶつかった時にハンドルに足を思い切りぶつけたのだろう。さらに、頭から山肌に激しくぶち当たったに違いない。首もかなりの角度で曲がっていた。かなりの重症だ。生きてはいまい。真琴はライダーの脇に立ち、頭全体を覆ったフルフェイスのヘルメットをはずしにかかった。やはり、女だった。顔はきれいで、傷一つない。かぶっていたフルフェイスのせいだろう。大きく見開かれた目の中で、黒い瞳が瞬きもせず真琴をじっと見つめていた。
「かわいそうに即死だな」
真琴は女の目蓋に手を当てると、そっと目を閉じさせた。きれいな安らかな寝顔だった。長い黒髪が無造作に地面に広がった。真琴はそれを束ねてやる。まだ、二十歳くらいだろう。顔立ちも整っている。
「一応、救急車を呼んだほうがいいか…」
真琴は遺体を見ながら、自分のマッハのほうに足を向けようとした。そのとき、何かが足首に絡みついた。見ると、女の手がいつのまにか真琴の足首を握り締めていた。
「あんた、あたしを見捨てる気なの?」
真琴は驚愕した。死んでると思った女がしゃべったのだ。
「…嘘だろ、生きてるのか?」
「ああ、なんとかね」
女の声は息も乱れない冷静な口調だ。
「い、今、救急車呼ぶから」
真琴は革ジャンのジッパーを下ろし胸からスマホをつまみ出した。
「そうね、でも、あんたの胸で休ませてもらえば、そのうち回復するから…呼ばなくていいよ」
「自分の体の状況が分かって言ってるのか?」
「どういうふうになってて?」
「片足はもうひどいもんさ。きっとぐしゃぐしゃだぞ」
真琴は女の顔から、傷ついた足へ目をやる。驚いたことに変な方向に向いていた足が、いつのまにかきちんと両足を揃えて横たわっていた。
「かわいそうに即死だな」
真琴は女の目蓋に手を当てると、そっと目を閉じさせた。きれいな安らかな寝顔だった。長い黒髪が無造作に地面に広がった。真琴はそれを束ねてやる。まだ、二十歳くらいだろう。顔立ちも整っている。
「一応、救急車を呼んだほうがいいか…」
真琴は遺体を見ながら、自分のマッハのほうに足を向けようとした。そのとき、何かが足首に絡みついた。見ると、女の手がいつのまにか真琴の足首を握り締めていた。
「あんた、あたしを見捨てる気なの?」
真琴は驚愕した。死んでると思った女がしゃべったのだ。
「…嘘だろ、生きてるのか?」
「ああ、なんとかね」
女の声は息も乱れない冷静な口調だ。
「い、今、救急車呼ぶから」
真琴は革ジャンのジッパーを下ろし胸からスマホをつまみ出した。
「そうね、でも、あんたの胸で休ませてもらえば、そのうち回復するから…呼ばなくていいよ」
「自分の体の状況が分かって言ってるのか?」
「どういうふうになってて?」
「片足はもうひどいもんさ。きっとぐしゃぐしゃだぞ」
真琴は女の顔から、傷ついた足へ目をやる。驚いたことに変な方向に向いていた足が、いつのまにかきちんと両足を揃えて横たわっていた。