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カスミ草の花束

第1章 カスミ草の花束

 またカーボネートが弾けて震えるような音がして、バスルームのドアが開いた。湯気と一緒にふんわりと甘くていい香りが六畳のワンルームに広がる。

「ひとつしかないよ……布団……?」

 僕の部屋にはシングルのベッドと小さなテーブルがあるだけだ。一駅ほど車を走らせば実家があるが、仕事の都合で独り暮らしをしていた。ハナの家もそう遠くではなかった。

 ダブっとした男モノのティシャツを着たハナがベッドに腰掛ける。ベッドのやつ、今日はやけに静かだ。体重七十キロちょっとの僕が座ると必ずギィって悲鳴を上げるのだが……。
 
 ベッドの上でアヒル座りをするハナの小さな身体がさらに小さくに見えた。僕の「男」がムックリと起き上がる。いっそのこと押し倒してしまいそうな衝動に駆られて、大きく深く息を吐いた。彼女に気付かれないように……。

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