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大きな桜の木の下で

第8章 別れの朝

ハラハラと綺麗な涙が頬を濡らす

(まったく頑固だな…
まぁそんな所も可愛いんだけどな)

「もう、そんなに泣くな…
お前の気持ちはわかったよ」

さとし君の指で優しく涙を拭われる

そんなに優しくされたら…私…

やめてよ…

揺らぐ気持ちを抑えきれなくなる…

「…ごめっ…あっ、ありがとう…」

「そんな顔すんな帰したく無くなるだろ」

「…だめ…帰る…あのね…お願いがあるの」

「ん?何?」

「…私の事忘れて…」

「なっ?翔ちゃんも俺の事忘れるの?」

「私は…忘れない…でもね…
さとし君は私の事なんて忘れて
幸せになって欲しい…」

「…わかったよ。幸せになるよ。」

「うん…ありがとう。」

「じぁ俺のお願いも聞いてくれる?」 

「…うん…何?…」

ギュ!いきなり抱きしめられた

お願いってこれの事?

「お別れのキスして?」

「えっ?」

「翔ちゃんからキスして
そしたら離してあげる」

「そんな…恥ずかしくて無理…」

「じゃあこのまま離さない」

…私も離れたく無い…けど…だめ…

チュッ

「これでいい?」

「ん、約束だからしょうがないな」

さとし君の腕がゆっくり離れていく…

「じぁ、駅まで送ろうか?」

「ここで別れよ…じゃないと…私…」

「わかった、気をつけて帰れよ。」

「うん。ありがとう。」

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