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人から見れば地獄。ただ僕は幸せだ。

第4章 和食の道

面接が終わり僕は次の日から働くこととなった。

朝は仕込みが多かったり弁当の予約があれば早いが基本10時スタートだった。

僕の仕事はお皿洗い、お皿出し、野菜洗い。
追い回しの仕事だ。
その中でも先輩のやり方を見て、自分で考え夜中に練習する。
そういうしきたりだった。
もちろん料理なんて知らない僕は野菜の切り方やらだし汁の取り方、全てが新鮮で面白かった。
なにより食べて美味しかった。
お店で働いて1ヶ月くらいたって働くことにも慣れた僕は夜中に包丁の練習や、卵焼き、だし汁の取り方を黙々と勉強した。
妹が札幌に来るまであと3ヶ月くらい。
少しでも体にいい野菜をたくさん食べれる料理をつくりたいなぁと思っていた。
そんなある日親方が日払いの出稼ぎを紹介してくれた。
俺の弟弟子のところだから粗相のないように。
と助言をもらった。
お店が休みの日に弟弟子のお店に行った。
僕の想像を超えた現場だった。。

働いてるお店より何倍も大きく、従業員も倍はいた。
厨房では罵声が飛び交い、今で言うパワハラなんて当たり前のように拳が飛んでくる。

なにより同じ世代の人の料理に対する姿勢がちがった。

仕事も取り合いだった。
自分の実力を見せるのも早い者勝ち。
待っててもチャンスはこない。
チャンスを手に入れても一度失敗したら次のチャンスはいつになるのかわからない。
ほんとに息の詰まる職場だった。
初日の僕は圧倒された。
唯一できる器出し。
それすらもすでに他の人間より遅かった。
飾り切りを頼まれてもできない。
自分の実力のなさを痛感した。
そんな中、こんな言葉が聞こえて。

親方もよくこんなやつ使うよな。あの人の目も耄碌したな。そろそろ引退かな。

まだ親方と出会ってそんなに経ってないけど僕は親方の悪口を言われて悔しかった。
なにより言い返せなかった自分が恥ずかしかった。

この日から僕は今悪口を言った人間を見返すために日々努力することを誓った。

妹のご飯つくるよりもまわりを黙らせたいそういった怒りの方が僕の原動力となった。

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