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人から見れば地獄。ただ僕は幸せだ。

第1章 幼少期

さっきまでの大騒ぎが嘘のように静まりかえった車内。
息をするのさえ許されないような空気を感じ息を殺すのに全力を尽くした。
しかし涙と鼻水はとまらない。この時から自分の体が自分のものではなく、自分では制御することができないと知った。
家に着き、親と言葉を交わすことなく部屋に逃げ込む。5分か10分かそれとも1時間か、僕は泣き続けた。
僕は殺されるのか。このまま殴られ続けるのか。こんな毎日が続くのか。早く施設に帰りたい。僕の本当の親は施設の先生たちだ。
いつも勉強しなさい。片付けしなさい。
うるさいと思っていた。だけど今は恋しい。
僕は愛されていたんだ。
あのゲンコツに愛はあったんだ。
どんっっ!!!
ふすまが飛んできた。母親だ。
次はなんだ。またなにかミスをしてしまったのか。
「グズグズうるせぇんだよ!泣くな!泣き止め!」
無理だ。僕には自分を制御するすべがない。
泣き止まない僕を母親は布団でぐるぐる巻きにする。
僕はこれをのちに肉だるま巻きと言い続ける。
身動きできなくなった僕。息もできない。
どうにか抜け出そうとする僕。
布団の上から蹴られてるのか、衝撃が伝わる。
痛くない。
この状態だと痛くないんだ。安心した。
痛くないならこの状態でもいい。
僕は抵抗するのをやめる。
あぁ今日は疲れたな。もう僕にはなにが正しくて、昨日までの日常など考える余裕もなくなっていた。
疲れた。とりあえず目をつぶる。
僕は自力で生き抜くことを諦める。
どうでもいい。なるようになれ。

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