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カトレアの咲く季節

第3章 ライという名の少年

「薬くらい、俺がいくらでも取りに行ってやるのに」
 収まらない苛立ちの中ついそう呟いたら、
「アレク」
と、ユナにしては珍しい鋭い声が飛んだ。

「あ、ごめん」
 アレクは首を竦めて謝り、ライを窺い見る。しかしどうやらライは三人分の取り皿を並べていて、今の話を聞いていなかったようだ。

「僕に何か用かい?」
 涼しい顔で訊くライに「なんでもない」と誤魔化して、アレクは椅子の一つに腰掛けた。
「さ、食べましょうね」
 レモン水とグラスを運んできたユナもその隣に座り、三人は手早く食前の祈りを捧げた。

 ライがさりげなく動かした水差しは、窓からの日差しを屈折させ、天井に光の波を映した。

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