ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第70章 嘘と隠し事
藤堂「ひなちゃん、深呼吸するよ。もう大丈夫だから落ち着こうね。」
さっきまでの怒気は一切消えて、いつもの優しい優しい藤堂先生の声がする。
宇髄「ゆっくりでいいから呼吸整えていくぞ。」
宇髄先生もすっかり元通りだけど、わたしが先生たちのようにすぐ切り替えられるわけもない。
「ケホケホッ…ハァハァッ…ごめんなさっ…ケホケホッ!! …ッハァ…ヒック……ごめんなさぃ…ハァハァッ…」
宇髄「ひなちゃん、もう謝らなくていいから落ち着こう。怒ってないから、な。」
藤堂「1回吸入しようか。ひなちゃんお口開けてごらん。」
怒ってないなんて言われても、さっきまでめちゃくちゃ怖かった。
わたしのせいでこうなったことも、先生たちがもう怒ってないこともわかるけど、身体が勝手に先生たちの手を払い除ける。
「ヤダッ…ヒック…ヒック…ぅぅ……ケホッ…ケホッ…ケホケホッ‼︎」
すると、はぁ…とひとつ小さなため息をついた五条先生が、
「ひな。」
ぎゅっ…
って優しく包み込んできた。
「すぐパニックになるな。もう大丈夫だから、ほら一緒に落ち着くぞ。ゆっくり吸ってー…はい、吐いてー…」
本当はこんなに優しいのに、わたしのバカ…
嘘なんてつくんじゃなかった…
後悔先に立たずとはこのことかと、覚えたての言葉がただ頭の中で繰り返される。