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ドSな兄と暮らしています

第7章 ふたりのこれから 〜最終章〜

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日付が変わってから、布団に入る。
バイトがある日は、いつもそうだ。

兄ちゃんは次の日仕事があると先に寝るけれど、休みだと、私と一緒に起きていることが多い。
明日は休みらしい。

私と同じ時間に布団に入った。

布団に入って、寝返りを打つ。
バイト帰りのことを考えると、眠れなくなっていた。
帰ってきてから抱きしめられた、兄ちゃんの体温が恋しくなった。

枕元の時計が午前1時を過ぎた頃だった。

「汐夏。眠れないんでしょ?」

襖の向こうから兄ちゃんの声がきこえた。
寝返りを打って、襖の方に体を向ける。
衣擦れの音が大きく響いた。

「起きてるな。こっちおいで」

「……行っていいの?」

「うん。おいで」

兄ちゃんにそう言われて、枕を持って、自分の布団を抜け出した。
そっと襖を開けると、兄ちゃんが上体を起こしていた。布団を半分めくって、自分の横をぽんぽんとたたく。

私は開けられた布団に滑り込むと、枕を置いて、横になった。
兄ちゃんは、私が入ったのを確認すると、自分も横になって、布団をゆっくりとかけた。

2人で仰向けになって寝る。
天井の小さな電気と、カーテンの隙間から差し込む月明かりだけの、静かな空間だった。

左側半分に、兄ちゃんの体温を感じる。左側にいる兄ちゃんに意識しすぎて、寝返りを打って、背を向けた。
だけれど兄ちゃんは、私のことを意識せずに、右腕を差し出す。

「ほれ」

私の首の下に腕を渡す。
腕枕に素直に従うと、後ろからそっと抱きしめられた。

私はその体温にすっぽり埋まる。
安心する温度なのに、少し緊張していた。
何となく襖の模様を目で追って、目を閉じる。


昔から、眠れない時は一緒の布団だった。

高校生になってからはめっきりなくなったけれど、この家に来たばかりの時は毎日一緒に寝ていた。
兄ちゃんは、夜になると不安で泣き出す私に困惑しながら、いつも同じ布団で寝てくれた。

「母さんじゃなくて、ごめんな」

何度も言いながら、泣き止むまでそばに居てくれた。
最初こそ、慣れずにずっと泣いていたけれど、次第に兄ちゃんと寝ることに安心を覚えていった。

それは、朝起きた時に、兄ちゃんが隣にいないことが、寂しくなるくらいだった。

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