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先生、出ちゃうよ

第2章 先生との出会い

次の日の朝、再び由奈ちゃんの部屋を回診する。

その時、アレルギー確認を由奈ちゃんのお母さんにしていた看護師が受話器を持って走ってきた。

「先生!由奈ちゃんのおかあさん、由奈ちゃんに代わって欲しいって!」

おっ!これは改心したか?
しかし、彼女には再び裏切られた。

由奈ちゃんにも迷惑かけるなと、暴言を吐いているのが電話越しに聞こえる。

可哀想に、、、。
彼女をチラリとみるとバレないように静かに涙を流す

彼女が男性恐怖症なのも忘れて俺は無意識のうちに彼女を抱きしめていた。

あっ、しまった、、

と思ったが彼女は意外にも落ち着いた。

落ち着いたところを狙って、すかさず昨日の問診の続きをする。

「由奈ちゃん、学校でおトイレ行けてた?」

彼女は首を横に振る。

「そっか、そっか、いつ頃から行けなくなっちゃった?」

彼女はうつむきながら周りにいる2、3人の看護師をチラチラ見ている。

もしかして、こんなに人がいるから話しにくいのかな?

もう、俺に慣れてくれたかな?

「由奈ちゃん?話しにくかったら先生にこっそり教えてくれてもいいし、看護師さんにこっそり教えてくれてもいいよ?」

すると、由奈ちゃんは

「先生、誰にも言わない?」

と小さな声でつぶやいた。

「うん、誰にも言わないよ!」

そう言うと、察した看護師たちが病室を出ていき、俺と由奈ちゃんと2人きりになった。

彼女の口から出てきた言葉は俺が思っていたより過酷な状況だった。
学校でお漏らししてから、いじめにあったこと。親友にも裏切られたこと。何度もお腹痛くなったけど、ママにも相談できなかったこと。

彼女は膀胱炎以前に、精神的な治療が必要だ。
膀胱炎が治ったところでこのままでは再発するのが明らかだ。

「そっか、そっか、辛かったね」

と背中をさすってやると彼女から安堵の表情が少しの見えた気がした。



彼女にも分かりやすいように病状の概要と、治療内容を伝え、病室を後にした。


彼女のように精神科と泌尿器科というように複数の科へのコンサルが必要な患者さんは総合医である俺の得意分野だ。

俺が責任を持って彼女を治すことを心に決めた。

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