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先生、出ちゃうよ

第17章 由奈の退行

成瀬side

由奈の治療が始まった。アメリカで見てきた子供たちはひどい副作用と闘いながら治療をしていた。由奈の身にも同じことが起きるということは簡単に予想ができた。
でも、この副作用を乗り越えるしか由奈の病気を治す術はない。

俺は心を鬼にしながら由奈に投薬した。


案の定、由奈はひどい吐き気に襲われた。
3日間吐き続けた。
由奈は吐き気に襲われることを恐れ俺から離れようとしなくなった。

俺が他の患者の回診に行こうとすると白衣の裾を掴み目を潤ませ行かないでと懇願する。

そんな由奈のそばにずっといてやりたいのは山々だったがそうもいかない。

毎日、由奈に泣かれながら俺は病室を後にした。

自分の気持ちを表現するのが苦手な由奈がここまで甘えてくるのには訳がある。

副作用の1つとして退行があらわれているのだろう。

退行の原因には色々あるが由奈の場合は愛情不足だろう。
由奈は子供の頃から親の愛に飢えていた。
身体が辛い今、より愛を欲しているのは間違いない。

そんな由奈に俺は出来るだけ寄り添ってあげたかった。由奈の治療は長期戦だ。俺は他の後輩に回せる患者は回し、由奈にさける時間を増やせるよう努力した。

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