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先生、出ちゃうよ

第17章 由奈の退行

成瀬先生へ

先生、由奈が由奈でいられる間に手紙を書きます。成瀬先生には感謝してもしきれません。先生が辛い治療をするのは由奈のためだって分かってるし、由奈の気持ちを受け止めて、俺も好きって言ってくれた時、すごく嬉しかった。幸せだった。本当にありがとう。
でもね、由奈、薬の副作用について色々調べたんだ。どんどん自分がおかしくなっていってしまうかもしれないこと。それがいつまで続くかわからないということ。分かってるんだ。
多分、由奈のことだから先生にいっぱい迷惑かけて、先生の自由もそして先生の未来も奪っているんじゃないかなっておもう。
初めて私に愛をくれたのは成瀬先生でした。私はそれで十分。先生が選んだ恋人なら私も好きになれると思う!だから成瀬先生、私にとらわれないで自由に生きてください。
                由奈より


由奈が俺をこんなにも思っていてくれたということ。そして、由奈があの苦しみの中に知っていながら飛び込んだという事実に涙が止まらなかった。

由奈の頬を手の甲で撫でながら啜り泣く俺の肩を叩きながら工藤は言った。

工藤「あの日由奈ちゃん、俺に言ったんだ。お前が幸せであることが自分の幸せだって。」

成瀬「由奈、俺は、、今の俺の幸せは由奈の治療にあたることなんだ。由奈が一歩ずつ前進していくことが俺の希望なんだ。だから俺はいつまでも待つよ。由奈のこと。」

スヤスヤと眠る由奈に話しかける俺を見ながら2人は寂しげな表情をしていた。

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