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不倫研究サークル

第8章 ふりだしに戻って

小梢を送った後、部屋へ戻った僕は土門華子の日記をあらためて読みなおしてみた。


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xxxx年xx月xx日

今日、森岡君が一緒に勉強しないか?
と誘ってくれた。

一緒にと言っても、森岡君が私に教えてくれるので、
森岡君には負担でしかないはずだ。

どうして?

どうして森岡君は私なんかに優しくしてくれるだろう?

私は今まで、ブスだし、運動もできないし、太っているし、勉強もできない。

神様まで私にイジワルしていると思っていた。

だけど、森岡君に会わせてくれた。

私は単純だ。

神様ありがとうと思ってしまった。

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僕に会えたことで神様に感謝するなんて……、

少し優しくされただけで、僕の事を好きになるなんて……、


土門華子のたった14年の人生は、何だったんだろう?


この日記を、暗記するまで読んだ小梢は、どんな気持ちで今日までの五年間を過ごしてきたのだろう?

小梢は、この重い荷物を背負って生きてきたんだ。
とても『土門さんの事なんて忘れて僕と付き合ってくれ』なんて言えない。


(土門さん……、これは小梢への復讐なの?)

(だとしたら、お願いします)

(小梢を許してください)


無力、無力、無力……。

僕は、自分の無力さが悔しかった。

小梢の苦しみを何とかできないだろうか?

日記のページをめくった。




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