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不倫研究サークル

第1章 謎の美少女と怪しいサークル

会場を出るまで、二~三人の先輩男子に声をかけられたが、僕が「帰りますんで」と断って彼女を無事に出口まで連れ出せた。

「ありがとうございました、森岡さん」

「あ、正門まで送りますよ、途中で話しかけられるかもしれないし」

「ええ~、良いんですか、森岡さんもサークル探しているのでは?」

「ええ、まだ時間もあるし、雪村さんの事が心配だから」

僕は、自分でも驚いている。女の子相手に、こんなにスラスラと言葉が出てくる自分に。
小梢は僕にとって今まで接したことのない特殊な女の子に感じた。

「わたし、自分が生まれ育った田舎が嫌で、それで東京に出てきたんです。
人見知りで奥手な自分を、少しでも変えたいと思ったけど、想像以上に華やかな場所で、舞い上がっちゃって……」


うつむき加減に、ポツリポツリと話す小梢の横顔、長いまつ毛が綺麗だ。


「僕もなんです。ド田舎からでてきたものの、不安でいっぱいです」

「なんだか、わたしたち、似てますね。
あ、ここで良いです。森岡さん、ありがとうございました。……その……」

「はい?」

「また……、学校でお会い出来たら……話しかけても良いですか?」

「ええ、もちろん」



彼女が手を振るので、僕も手を振る。
 
こうやって女の子と別れ際に手を振るなんて、僕にとって初めての経験だ。

少し自信がみなぎってくる気がした。




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