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となりのにぃに

第17章 バレンタインは誰のもの?

仕方がないから私も帰ることにした。




もう誰も歩いていない帰り道 右、左と前に出る靴だけを見つめて歩く。




「このカップケーキどうしよう…」




ひとりごとを呟いても誰も答えてくれるわけがない。





もう家についた。そんなに歩いたっけ? 無心だったんだろうな。



「ただいま…」


「お、おかえり。遅かったな」





玄関先に敬人がいた。





敬人の顔を見た瞬間、涙が溢れてしまった。




「どうした!? 学校で何かあったか?」



慌てて私に駆け寄ってきてくれる。




そんな敬人の服を軽く掴んで呟いた。




「お願い、今だけだから、今だけぎゅってしてくれない?」



もう12歳だからハグはしなくなっていた。 敬人は一瞬躊躇ったけど、そっとハグしてくれた。




「ありがとう。ごめんなさい…」



何も言わずにハグしたまま、背中をトントンと叩いてくれる敬人の服に涙がつかないように、グッとお腹に力をいれた。





「…もう大丈夫。ありがとう」



そう言って敬人からすっと離れた。敬人は涙で濡れた私の顔に手を伸ばして、途中で止めて戻した。




「何かあったなら、おばさんに言えよ?」


「うん…」




ぽんぽんと頭と軽く撫でて背中を向けてくれた。

「ありがとう」もう一度言って部屋に向かった

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