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天空のアルカディア

第5章 奪還

わぁぁぁ


反乱軍の兵士達が悲鳴をあげていた


あるものは胴を寸断され


あるものは石の剣に串刺し


亡霊戦士達は反乱軍を蹂躙する


反乱軍は果敢に矢や槍、剣で応戦するが圧縮された土の体を持つ亡霊戦士には刃が通らない


凄まじい勢いに押されて長蛇の隊列は乱された


山道から外れ、森の中へ逃げる兵士が出る始末


「くっ、こ、こんな事で私の計画が…」


馬車から降り、苦渋の表情をあらわにするランス


馬車の中でアリスは目と耳を塞ぎ、しゃがみこんで震えている


馬車とランスの位置はまだ交戦中の前線から離れている


ランスが暗殺を断念し、アリスを連れ撤退しようかと考えた時


交戦時のそれとは違う、地響きが鳴る


立っていられず、兵士達やランスは地に伏せた


ガラガラ…


馬車だけを残し、その周りの地面が割れ、穴が出来る


当然、ランスや馬車を警護していた兵士達がその穴に落ちた


「な、なんだ…?」


頭を手でおさえながら呻くランス


しかし、穴の深さは5、6メートルはあり、外の様子など分かる筈もない


やがて鈍痛に我慢出来なくなり、彼の意識は闇へと消えた





「な、何…?」


突然大きな音が聞こえたかと思うと周りが途端に静かになった


馬車の中にいるアリスには外の様子は分からない


―――怖い、怖い……姉様…


ギュッと目をつぶり、震え上がるアリス


ギィ…


扉の開く音が聞こえた


ランスかと思い、更に震える


「アリス様…ですか?」


ランスとは違う声


顔を上げると金髪で長髪の男性が手を差し伸べていた


服装は黒いマントで身を包み、背には身長程もある長剣を背負っていた


明らかに反乱軍兵士達とは違うが、正規軍の兵士とも思えない


不安の影を表情に出す


「マリア様から救出を依頼された者です」


更に手を伸ばす


正直、怪しい


この手の詐欺は世界で星の数ほどある


幼い彼女もそれくらいは知っている


だが、このまま残っても自分に得がない事も分かっている


だから彼女は手を伸ばした


一縷の光に希望を託して










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