悪魔と天使とお嬢様
第1章 突然変わる日常
ちょうど母親くらいの年齢のようだった…
その女性は私に近寄ると、私の両手を優しく握った。
「…恵美さん。会いたかったわ…」
まったく意味が分からない…
なぜ、私はここに連れてこられたのか…
この人たちは誰なのか…
私はただ茫然としていた…
「恵美さん、外は少し寒いので、中に入りましょう…」
その女性が、お屋敷に入っていくと、私はまた二人の男性に両側から掴まれてお屋敷に中に連れて行かれた。
そのお屋敷は、西洋建築の古い洋館でその広さに驚いた。
玄関と思える場所に、家が一軒建ちそうなくらいの広さだった。
よく見ると、壁や窓のあちこちに細かい彫刻が刻まれており、とても美しいお屋敷だった。
広い廊下を通り、客間と思われる部屋に通された。
その女性はニコリと笑いながら、後ろにいた男性に何か合図をすると、花の香の紅茶が運ばれてきた。
「少し温かいものでも召し上がってくださいね。落ち着いたらお話しますね…」
執事と思われる男性が、華麗な手さばきで紅茶を注いでくれた。
“…本物の執事?本当にいるんだぁ…”
「…っお…美味しい…こんな紅茶初めて…」
一口飲んでみた紅茶が、驚くほど美味しく、思わず声が出てしまった。
「…少し落ち着いたかしら…お話ししても…大丈夫かしら…」