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私淫らに堕ちます

第7章 デート②

 暗い空間の中で,ガラス越しに色とりどりのクラゲが泳いでいる。

 明るくライトアップされた透明のクラゲが,ゆったりと泳ぐ様子はまさに幻想的だ。

 この水族館では,クラゲをより楽しめるように,パノラマで鑑賞したり,トンネル状でクラゲの様子を下から堪能できたりできるようになっている。

 水族館なんてもう何年も来ていない。以前来たのは小学生の時だったのではないかしら。

 目の前のクラゲが,かさの部分をひらひらとなびかせている。何千,何万という大きさの違うクラゲが,一つのアートを作り上げていた。

「綺麗~。」

 呟くわたしに,柔らかく微笑む。真っ暗な顔に色鮮やかな光が照らされ,モデル写真の一枚のような美しい造形が目に映った。ドクッという鼓動の跳ねとともに目元に赤みがさす。

「本当に綺麗ですね。見ているだけで癒やされます。でも,ぼくとしては,先生と一緒にいる方が落ち着きます。」
 
 また本心ともリップサービスともとれる言葉。年下のそんな軽い言葉で,喜ぶと思わないで,と思いながら,口元を緩めてしまうのは,わたしが単純だから?それとも心から人を好きになったことがないからだろうか。

 華麗にスルーして,クラゲに集中するわたしに,耳元まで近づいて,

「本当ですよ。」
と囁く彼は卑怯だ。そんなことを言われたら,年上の威厳も何もあったものじゃない。「自分も」と言わない自分を褒めてあげたい。

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