テキストサイズ

私淫らに堕ちます

第7章 デート②

「そんなこと言って。別に彼女がいるくせに。」

ブスッっとした顔で呟くわたしは,大人じゃない。そう,彼には彼女がいるとは聞いていた。

 それだからこそ,デートにいくべきかどうか,真剣に悩んだのだ。教師として人生の先輩として,彼女のためにこんなことは止めるべきだと説くべきなのだ。

「彼女?そんなのいませんよ。」

「えっ?でも,いろんな人からあなたに彼女がいるって聞いたわよ。」

「あぁーー。篠原彩花のことですね。あれは,彼女が勝手に彼女だと言っているだけです。それを否定しなかったら,みんなに広まってしまって。正直ぼくに彼女がいたことになっていると,都合がよかったんですよ。いないと分かると変に期待する人もいますから。ぼくが好きな人は,先生だけですよ。」

 確かに。これだけの美形で,性格もよければ,付き合いたいと思う女子高生も多いだろう。

 いちいち断るのも面倒くさそうだ。そういえば,自分も高校時代同じような立場だったわね。

「本当にそうかしら。年上をからかって楽しいの?」

 自分でも素直じゃないと思う。うれしいのに態度でそれを表せない。

 でも,大人というのはそういうものだと思う。自分の気持ちをストレートに表せるのは高校生までだ。それを羨ましいと感じるか,それとも自分が成長したと思うかは人それぞれだ。

「先生?一緒にいれてうれしいんですよ。」

 そう言って,わたしの手を握る。指と指の間に彼の指がしっかりはまって,満面の笑みでぎゅっと心を伝えてくる。それが,眩しくて,恥ずかしくて,またクラゲへ視線を戻した。

 紫と青のクラゲが,目の前で重なった。自由にいかにも気持ちよさそうに,かさを揺らしている。やがて,二匹は,一緒に上へと昇っていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ