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私淫らに堕ちます

第3章 悶々

 両親がいないことは知り,えっという声を上げてしまう。普段の彼からは,想像できなかったことだ。

「亡くなった理由は知らないけど,引き取ってくれる親戚もいないみたい。学費は特待生でいらないけど,生活費は自分で稼いでいるのよ。だから部活に入っていないわけ。」

「そんなふうには全然見えませんでした。」

「そうね。不思議なくらい見えないわよね。それが無理をしているのでなければいいけど。もし,何かあったとき一番力になるのは,栞先生かなって思ってね。勘かな~。一番年齢も近いし。それで聞いてみたの。」

 彼の事実に驚きながらも,南先生の真意が分かってホッとする。

「分かりました。何かできるようなことがあれば・・・」
「お願いね。これも教師の給料分よ。」

 いつものキリッとした表情を緩め,にこっと微笑んで,南先生は職員室を出ていった。

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