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私淫らに堕ちます

第1章 出会い

 授業での彼は,常に真剣で模範的であり,優等生だった。

 化学の成績はずば抜けて優秀で,授業も彼の発言や行動に触発されて,主体的に学習する雰囲気を作り出してくれている。

 誰にでも優しい物言いなのに,誰も逆らうことができない。

 いや,彼の意図を積極的に汲んで学習し,彼に褒められたがっているといった方がいいだろう。

 そのため,過去の平均点と比べると,今年の学級平均も極めて高いのである。

 1学期の学力考査の後,結果が分かり,管理職を含め先輩教師から指導力を褒められたが,実際は自分の力ではないと思っているし,事実彼の力だ。

 他の教科を聞いても同じで,彼は入学してからずっと学年トップである。運動神経も抜群で,いろいろな部活動から当然のように勧誘がきたが,すべて断ったらしい。


 赴任してしばらくして,女生徒から彼に彼女がいることを聞いた。

 ショックが隠し切れず,周りの女生徒から怪しまれたが,その場を取り繕って逃れた。

 「あれだけ魅力的なのだから当たり前か」という思いと,「もう少し遅く生まれていたら私にも」という邪な感情,そしてこれで一生徒として扱うことができるという安心感という複雑な感情が渦まいた。

 私が持った感情は,恋というものではなく,「綺麗なものを耽美するという人間として当たり前の感情」であるという結論に至り,自分を納得させた。

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