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私淫らに堕ちます

第1章 出会い

 黒板に化学式を書き,説明に入ろうと前を向いた。

 この単元の中でも,理解が不足しては困るポイントであり,分かりやすく説明するに越したことはない。

 私は,つい習慣でまず彼に視線を向ける。吸いこまれるような美しい瞳に,ドキッとさせられる。

 細く長い指が,シャープペンを扱う姿は,息が止まりそうなくらい繊細で優美だ。その一挙手一投足に目が奪われてしまう。

ゴクッ
はしたないことに生唾を飲み干し,喉の渇きを癒した。いや,違うのか。私は,何かを欲しているのだ。

「先生?」

視線の反対側からの男子生徒の声に,はっと我に返った。

「ごめんなさい。考え事しちゃって。」

普通なら若い女教師にツッコむ男子学生もいそうなもんだが,何事もなかったように授業は再開した。

 別に意識しているわけではない。ちょっと彼が目に映っただけ。たまたま見とれてしまっただけ。そう自分に言い聞かせ,授業に集中する。

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