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私淫らに堕ちます

第6章 デート①

ハッ  ハッ  ハッ

 どうやらいつものようにうなされていたようだ。ゆっくりと目を開け,そしてまた目を閉じた。先ほどの映像がまた思い出される。

 母さんに麗香さんの笑い声。大学の研究室で,新薬の開発に取り組み,それに没頭していた母さん。そして助手として,それを支える麗香さん。

 なかなか家に帰れなくて,久しぶりに帰ってきたと思ったら,ボロボロで。誰が母さんだよってツッコミたくなるほど家事は僕任せ。

 何気ない毎日だったけど,それが今から思えば幸せだった。大好きな二人がいて,いつも馬鹿話して,迷惑ばっかりかけられて。そして・・・・

 中2の頃だから,もう3年がたっているのか。

 これから先のことを思い出そうとして,頭を振り,思考を遮断する。何も朝から嫌なことを思い出すことはない。

 日本に帰ってきて一年。目が覚めると,涙が止まらず,吐き気が続いていた。悔しくて,悲しくて,寂しくて。とっくに心は壊れているのはずなのに,まだ人間でいるのだと実感させられる

「案外人っていうのは丈夫なもんだな。」

 ポツリと呟いてみた。たった一人生き残った自分への皮肉。乾いた笑いしか出ない。

 寝汗を洗い落とすため,シャワー室に入る。シャワーからやや強めの冷水を頭から被った。ひんやりとした冷たさが,昔の映像を消していく。

「麗香さん。」
一昨日の先生と麗香さんの姿が重なる。

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