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私淫らに堕ちます

第7章 デート②

それを見逃す井坂さんではない。自分は恋愛経験少ない癖に,人となるとこの探知能力ってどういうこと?

「えっ?何?好きな人でもいるの?嘘~,わたしの可愛いはるちゃんが,他の女に獲られるなんて。」

 そのワザとらしい驚きビックリの顔止めてくれません?可愛いですけど。言いませんけど。

「ぼくは井坂さんのものではないですので,他の女性に獲られることもありません。それに,そんな人いませんよ。」

 ちょっと自分でもムキになって言っている自覚がある。今度は,井坂さん。怪しいって顔を向けてくる。それぐらいで,ぼくは白状しませんよ,全く。

「へぇ~,そっか,そっか。」

いつにもなくうれしそうな井坂さん。優しい表情がぼくの心を包む。ぼくの心がどん底の時,ずっと支えてきてくれた笑顔だ。これをされるとぼくは何も言えない。

「なっ,何もないですよ,本当に。研究に戻ります。」

 ぐいっと残ったコーヒーを飲んで立ち上がり,その場は退散することにする。なんだか頬が赤く,耳まで赤い。いつものクールな自分が台無しだ。

「はるちゃん頑張れ~。」
動揺する自分に背中の方から井坂さんからそう言われたのを思い出してしまう。いつもの愛情の詰まった言葉だ。優しくて優しくてかけがえのない言葉。

やっぱり井坂さんにはかなわないや。

急に眠気に襲われ,目を開けていられなくなる。さすがに少しは眠らないとまずい。

「すみません。着いたら起こしてくれませんか。」
タクシーの運転手にそう言って,目を瞑った。

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