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私淫らに堕ちます

第7章 デート②

「もう昼ですよ。せっかく作った昼食が冷めちゃうじゃないですか。もうどこまでダメダメなんだ,あの人は。」

 テーブルの上には,母の大好きなパスタにお肉にサラダ。お肉の皿には,苦手な人参つき。40前の大人が偏食ってダメだろう。

「あははは。そう言いながら何度も心配で様子を見にいってるじゃない。しかも,先生の好物ばっかり。あっ,嫌いな人参が一つ。まっ,一緒に過ごしながら,はるくんに食事を任せっきりにしている自分もダメダメなんだけどね。」

 トマトをふんだんに使って,手間暇かけて作ったパスタを口にしながら自虐する麗香さんは相変わらず美しい。

 初めて会ったときは,なんて素敵な美少女って感じだったが,それから順調に大人の美女として変貌していっている。

「麗香さんには,本当に母の面倒見てくださってるので感謝してるんです。もう麗香さんがいなかったら,我が家はどうなっていたことか。どんだけ優秀な研究者か知りませんが,もう何にもできないんですよ。たまには親らしいとこ見せて欲しいもんです。」

 はぁーーとため息をついた。そんな母親だから,いつも心配でならないんだけど。

「うらやましいな~。わたしって,早く両親亡くなったから。」

 やや陰のある声で,俯く麗香さんに,僕は激しく動揺してしまう。ぼくだって,葬式で見せた悲しみにくれている麗香さんを忘れたことはない。ぼくが,麗香さんを悲しませてどうする。

「すっ,すみません。思い出させてしまって。えっ,えっとーーーーえとえと。」

 こんなときに言葉がでないじゃん。悲しんでるときに優しくかける言葉って何があるんだ~。

「あははは。冗談よ冗談。」

へっ?

 いかにも面白いって顔で,満面の笑みを見せる麗香さん。無邪気に笑う麗香さんにむっとしてしまう。

 ひどいじゃないか,麗香さん。ぼくはこう見えても純朴なんだぞ。いや。こう見えなくても純朴なんだ。ガラスのハートはちょっとしたことでも傷つくってこと知ってて欲しいぞ。言えないけど。

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