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分け合う体温

第2章 隠れてキス

胸が痛くなった。

理人は、私を一人の女として、見ている。

姉じゃなくて、普通の女の子。


「理人、あのね。」

このフェンスが、私達の間を塞いでくれればいい。

「やっぱり、私達。愛し合っちゃいけないと思うの。」

すると、理人はフェンスの穴から、腕を出した。

「由乃。手、貸して。」

ゴミ箱を持っていない手を、理人に差し出した。


理人は、私の手をぎゅっと、握ってくれた。

温かい。

理人の優しい気持ちが、伝わってくる。


「由乃。俺、この前言ったよね。由乃の事が好きだって。」

「聞いた。でも、私達姉弟《キョウダイ》だし。」

「そんな事、関係ないくらいに、由乃の事が好きなんだ。」

息をゴクンと飲んで、深呼吸をした。

「由乃……」

また理人の、切ない声。

この声が、私を惑わせる。

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