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分け合う体温

第2章 隠れてキス

「だったら、もっと怒れよ!俺の事、突き放せよ!!」

「そんな……」

私は、息を飲んだ。

「そんなってなんだよ。俺の事、蔑めよ。変態だって、罵ってくれよ!」

理人は、フェンスに両手をついて、息を切らしている。


「理人……」

そうだよ。

理人の言う通り。

もっと理人の事を怒って、突き放せばいいのに。

どうして、私はできないんだろう。


答えは知っている。

私も、理人の事が好きなのだ。

弟以上に、彼を愛しているからだ。


「……できないよ。」

理人が顔を上げる。

「できないよ。理人を突き放すなんて。」

「由乃……」

私は、ゴミ箱を置いた。

そして、フェンスの穴に手を入れ、理人の涙を拭いた。


「私も好きなの……理人の事……」

理人の瞳が、大きくなる。

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