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イラクサの棘

第14章 チカヅキタイ



「いらっしゃいませ、
ようこそジビエ・ケントゥリアへ。」

すらっと背の高い優しい感じの
シェフでオーナーの長野さんが招き入れてくれた。

暖炉の温もりに
ランプの灯りがテーブルの上に置かれて
しすがで落ち着きた佇まいでとても
居心地の良い雰囲気のお店。

「ここは、完全予約制のジビエ肉専門の
レストランでな。
こちらオーナーの長野、俺の牧場の
共同出資者の1人だ。」

「いらっしゃいませ、
翔、久しぶりだなってか、あれなんか?
ずいぶんと男前になったね?」




「お久しぶりです、長野先輩
かなりイケメンでしょ?
今夜は潤が髪から服から全身コーディネート
してくれたんですよ、なぁ潤!」

「えっと、初めてまして
松本潤って言います。
今夜は俺らの為に
わざわざ貸切にしてくださって
本当にありがとうございます。」

「翔の知り合いにしてはずいぶんと丁寧だね。
よろしくね、潤さん。
それにしても、とびきりの美人さんだ。」

「そんなこと…」

「だろ?潤は美人で気立も良くて料理は上手いし、
センスは抜群
ただし、動物はちょっとだけ苦手だよな?」


それは俺のセリフでしょ!
なんて岡田先輩にツッコミを入れる翔さんが
2人の先輩からぐりぐり小突かれてる。
食べ歩きの趣味が高じて
世界中のグルメを食べ歩きしてた時
スペインで2人に知り合いになったそうだ。


闘牛士のアルバイトまでしたことの
ある岡田先輩は、牛のツノに突き刺された
こともあるらしくって
豪快に笑い飛ばしてたけど
俺なら絶対怖くて牛にも近づけなくなる。

「突き立てる、真実の瞬間がな、
あの瞬間がたまらなく好きなんだよ  
命と命の駆け引きの魂が鬩ぎ合う瞬間がな
最高なんだ。」

「だから、狩猟もするんだろ?
生き物同士の命の駆け引きだもんな。」
 

闘牛のことはよくわからないけど
運ばれてきたメインのプレート料理の
味わいは絶品だとわかる。
赤ワインで煮込まれた鹿のロース肉は
臭みなんて全くなくて、
口の中でほぐれるような噛みごたえで
やわらかくて肉汁まで美味しい。

長野さんも加わっての食事の時間は
3人の昔のバカな思い出話に花が咲いて
おおいに笑わせてもらった。






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