イラクサの棘
第16章 アナタニチカヅキタイ
空気が冷えてて酔いが回って火照る肌には
心地良く感じる。
「寒くない?」
「ん、大丈夫…」
後部座席で翔さんの肩にもたれかかるように
並んで座ってると右折する際に
シートの上の翔さんの指に俺の左手の
指先がほんのわずかに触れた。
ピクっと動く感触を確認するように指先だけで
翔さんの手を探ってると
ギュッと握りしめてくれる。
繋がれてる指先の微熱が徐々に身体中に
伝わってくる。
「あのね俺、翔さんに言わなきゃいけない
ことがあるんだ。」
「ん、なんだ?」
「部屋に戻ったら、話すね」
智からの電話のこと
俺の身体に起きてる異変も
きちんと翔さんに話さなきゃ
※ ※ ※
翔side
タクシーに乗り込むと甘えるように潤が
頭を俺の肩にのせてくる。
今日も相当な酒を呑んでたが
ゆっくり食事をしながらだったせいか
悪酔いはしてない筈だ。
「おっと、ん?」
偶然、潤の指先に触れたと思ったが、
まるで俺の指先の気配を探るように
そっと触れてきてる。
強く握りしめてやると、定まら無かった
視線が俺を見上げて嬉しそうに微笑んできた。
抱きしめたくなる衝動を抑えて
はやく到着してくれることを願ってしまう。
前払いで支払われていた料金
手渡された鍵で、玄関の扉を開け
火の気のない室内に手を繋いで入る。
灯りをつけても
まだ黙り込んだままの潤の手のそっと離して
ソファに座らせた。