イラクサの棘
第2章 プラン
「櫻井さんってホントに…」
「ちげえだろ?
ほら俺の名前で呼んでみてよ。」
「……翔…さん」
「フハッ
なんだそりゃ、めっちゃ小声じゃん。
翔って呼び捨てでいいのに。」
「それは、できないよ。
翔さんのほうが俺よりも年上だし…」
「じゃああらためて、
今回の旅の同行者として潤&翔ってことで乾杯だな。」
「なんだよ、漫才コンビじゃないし。」
「お、それなら俺の知り合いに裕っヤツがいるわ。
そいつ加えてたら潤、祐、翔になるぜ?
トリオで漫才できんじゃね?」
「やだ、ぜったいにやらないよ。」
「だな、準優勝なんて縁起でもねえし。
俺と潤で、狙うとしたら
絶対にグランプリ優勝だもんな」
大学主催
ミスコングランプリ
優勝
封印した筈の苦々しい過去が
胸の奥底から起き上がりそうになり
注がれてるグラスの水を一気に飲み干す。
熱く爛れていた時代
彼と向き合って今更何を話せばいい?
「潤、そろそろ出よっか?」
「え、なんで
まだまだ呑みたりないでしょ?」
「調子良くないんだろ?ぼんやりしたりするし。
早めに帰って休めよ。」
「そんなこと、ちょっと空きっ腹に呑んだから
まだぜんぜん大丈夫だよ。
ツマミだってこんなに頼んだし。」
「なら、コレで酒は最後な。
さあ、今から喰うぞ!ほら、潤も食え食え。」
「アハハハッ
翔さん、まるでオヤジみたいだよ?
せっかくイケメンなのに、」
焼き鳥を口いっぱいに頬張ってみせたり
ゲソ焼き、揚げ出し豆腐
えだ豆の食べ切るスピードの速さ
美味そうに食べるその姿は
オヤジよりもわんぱく小僧みたいだった。