イラクサの棘
第16章 アナタニチカヅキタイ
浮気はしない彼だったが
騙されて賭け事に大負けした時に
一度だけ
潤に土下座して乞うた出来事は
思い出すのも辛いのか
絶句したまま唇を震わせて涙をこぼすので
しばらく抱きしめてやっていた。
襲われたんだ
複数人の相手させられて
男なら妊娠もしないだろって
見知らぬ男達に、何度も中出しされて
一晩中どろどろになるまで犯され続けたんだ
とんだ下衆野郎の話に
怒りと吐き気が込み上げくるが
辛いことを告白してるのは潤のほうだ
無言のまま髪を優しく撫で続けてやる。
怒り狂って無視しても、
別れるって泣き叫んでも、
結局は最後は絆されて同棲は続けていた。
だが、ある日
実家から連絡が有り
そこから2人の同棲生活が急転直下する。
「智のお父さんが入院したって
連絡が来て、一度見舞いに実家へ帰ることに
なったんだ。」
意識不明の深刻な状態
簡単には帰って来れない
遠距離で募る想い
毎日かかってくる彼からの電話だけが唯一の救い
父親が経営してた会社の負債
傾きかけていた事業
なにも知らずにのんきに留年を
続けていた事に
ひどく落ち込む恋人を懸命に励ましたそうだ。
1ヶ月が過ぎて
部屋に帰ってきた彼のやつれた様子に
言葉を失ったが
もつれるようにベッドへと連れて行かれて
意識が飛ぶ程まで激しく抱かれたらしい。
言葉は少なかったけど
日常が戻りつつあった一週間後
彼から切り出された発言は
大学を退学して実家に戻ることだった。