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イラクサの棘

第16章 アナタニチカヅキタイ

潤side


※ ※ ※

「なんで?どうして?
実家に帰るって、大学を辞めるって!
なんで、休学じゃだめなの?!」

「なんとか意識は戻ったけど
親父、相当ヤバいんだ。
母ちゃんも限界きてて、俺が帰ってやらねえと。
もう他に手がねえんだ。
今まで親不孝してきた罰かな?」

「そんな、だって…やだよ。
俺は智のこと…智と別れたくないっ!」

「ごめんな、潤。
もう向こうで決めてきたことなんだよ
それに…もう家には金もねえんだ
大学も続けられねえし。」

「俺、もっと働くから!バイト増やすからだめ?
智と別れるなんて…そんなの…絶対やだよ」

「あのな、潤。
勝手に別れるとか決めんなよ。
だいぶ距離は離れちまうけど、俺はおまえと
別れる気はねえんだ!
ちゃんとおまえのこと迎えに来るからな。」




実家に帰るまでの3日間
ほぼ、起きてる間は智に抱かれてた。
外出もほとんどせずに
2人が吐き出す欲望の果ての青臭い匂いの中で
貫かれて、受け止め
注がれて、飲み干す
本能の性欲だけを
剥き出しにした2人きりの空間



「このまま時が止まっちゃえばいいのに…」

「ごめんな、でも俺おまえを
迎えに来るから、待っててくれるよな?」

「智、約束だよ?
俺、信じてちゃんと待ってるから…」

「愛してるよ、潤。
他の奴なんかに惚れたりするなよ。
おまえは俺のものだからな?」

「うん、俺も智のこと…愛してる。
智のこと…信じて待ってるからね。」

※ ※ ※



何度ぬぐっても込み上げる涙で
智の指先を冷たく濡らしていた。




あの日あのとき、あの瞬間が
俺の恋愛の絶頂期だったかもしれない。





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