イラクサの棘
第18章 出発
「お世話になって
こんなにお土産までたくさんもらって
いいのかな?」
「いいの、いいの。
あの2人は器はデカいし、葵さんも
ゴリラの嫁さんになるくらい度胸は座ってるし。
それに、招待状届いたら
また2人で一緒にお祝い持っていきゃあいいだろ?」
不確かな未来なのに
2人で一緒に…
当然のようにさらっと言ってくれる事が
なんだかうれしくて
長野さん手作りのミルクキャラメルの
包紙をむいて
おっきな口を開ける翔さんの口に放り込んだ。
どこまでものどかな風景がつづく
休憩を兼ねて、喫茶店にはいることにする。
道路沿いでみつけたすこし
古ぼけたような外観、昭和の雰囲気が
漂う味のあるお店。
人の良さげな初老の男性が
1人でやってるみたいで、
カフェオレと、ホットココアを注文して
翔さんが
今夜の宿泊先に提案してきたホテルのサイトを
スマホの画面を見ていたら
カップを運んできてくれた
男性が声をかけてきた。
「もしかして、お2人は富良野方面へ
向かっておられるのですか?」
「ええ、そのつもりですけどなにか?」
「もしよろしければ
あちらの娘さんお二人を富良野まで
連れて行ってもらえませんかね?
ちょっと困っておりまして…」
奥の席に座っていた2人組がこちらを向いて
頭を下げてくる。
大学生くらいかな?
単線電車の事故で思わぬ迂回をすることに
なって、1時間ちかくを徒歩でこの店まで
来たらしい。