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イラクサの棘

第18章 出発



彼女らの手荷物を積み終わった翔さんの腕に
豊満な胸をわざと押し当てて
絡みつくような仕草で
ささっと助手席へと向かうグラマラス女。


「おっとごめんね、助手席には潤が座るから。
こいつ車酔いしやすいからさ。
だからさっき酔い止めも飲ませたんだ。」


「やだあーあたしったら。ウフフ
おんなじですぅー
あたしもぉ、すぐ酔っちゃうほうだからぁ…」


アレはビタミン剤だったんだけど。
そっか翔さんの隣、助手席は俺の席なんだ。

翔さんのそんなセリフに単純にほだされて
彼女らよりも自分の優位性に少しだけ
気持ちが軽くなり
すこしは彼女らの会話に加わろうと努力したの
はわずかな時間だけ。



ノイズキャンセラー
やばい…やっぱ今すぐ耳栓が欲しいかも。



「ごめん、俺、少し寝るから…」

「ああ、分かった。
潤、ちゃんと窓閉めておけよ。」



翔さんの言うことを素直に
聞いとけば良かったのに
すこしだけ開けてた窓はそのままにして
目を閉じてしまった。

聞きたくもない後部座席の女どもの喧騒を
風の音で誤魔化したかったのもしれない。




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