イラクサの棘
第18章 出発
ゴホっゴホっ
喉になにか引っかかるみたいな違和感
咳払いしたけどなかなかとれなくて
一口だけ水を飲む。
「ルート変更で、
病院に向かってるからな
おまえ、朝から咳してるだろ?
念の為医者に診てもらうから。」
「別に、大丈夫だから。
俺は、平気だってば!」
ハザードランプを出し
車を左に寄せて停止させた翔さんが
身体を捻って、伸ばしてきた右手で
そっと俺のひたいに触れてくる。
「ちょっと熱いな。
顔もな、いつもよりすこし赤いんだよ。
念のためだからさ、そんな怒るなよ、
近くに知り合いの医者がいるんだ。
もしかして注射がこわいの?」
怒ってるし、睨んでる
なんでそんなことまで分かっちゃうのかな?
ううん違う
俺は…拗ねてるんだ
俺よりも先に俺の体調を考えて、俺の為に
行動してくれるんだもん。
こんな風にされると
自分でもこの感情をどう伝えたらいいのか
よくわかんないだ。
「…翔さんの手…ひんやりしてて
気持ちいい。」
「そっか、じゃあこっちの手は…」
左手は頬を撫でるようにやさしく
添えてくる。
「どう?気持ちいい?」
「ん…気持ちいい。
さっき…翔さん、あの子達とお茶したの?」