イラクサの棘
第18章 出発
「どうした?潤?」
「翔さんが毎朝、歯磨き粉こんもりつけて
丁寧に歯磨きしてたのって
…俺の為なんだよね?」
「ん?」
「あのね、熱いんだ、翔さん…
俺の…くちびるの…リハビリも、手伝って…」
胸が無くても
やわからな抱き心地じゃなくても
俺でいいんだよね?
「ああ、いいぜ。潤のおおせのままに…」
抱き寄せてくれる腕の中で瞼を閉じる
横を通り過ぎる車や対向車
そんな雑多なことへの意識なんて
全て吹き飛んでしまうくらい
翔さんとのキスは長くて深くて濃密なものだ。
ほら、やっぱり…
俺の身体は翔さんとの触れ合いで熱を持ち
反応し始めるんだ。
この濃厚なキスでそう確信できた。
「おっと、忘れてたわ。ほらよ潤。
冷めちまったかな?」
後部座席に手を伸ばして手渡される紙袋。
「なに?」
「さっき露店で買ったヤツ
ご当地の肉まん、あんまんセットだ。」
「わぁ、まだあったかい。
翔さんどっちがいい?」
「潤が食べたい方を選べよ。」
「じゃあ半分こ、シェアだね。」
キスから自然な流れで
おだやかな空気感にしてくれたおかげで
下腹部の中心に集まりかけてた血流が霧散してゆく。
ふたたび走り出す車
窓は閉めている2人きりの空間
翔さんのおっきな口に肉まんを
少しづつちぎりながら食べさせてあげた。