イラクサの棘
第19章 診療所
しかし、こうも
まるで連絡網がまわされてるかのような
タイミングの良さは…
おそらく…いやきっとアイツしかいない。
俺が自分でたてた計画のプランを
遂行してるかに見えるが
いつのまにか
アイツの考えたレールに乗せられてたりする。
まあ、最終的に目的地点へ
到達すれば
手段は選ばずだから
とりあえず今は目の前の潤の体調を良く
してやる事が最優先。
「おっし、診察終了!
あ、今から休憩な。
おつかれさん、じゃあまた夕方。」
年配の看護婦を帰らせて俺たちを
応接室へ招き入れてくれる。
城島さんの部屋なのにまるで我が物顔で
振る舞う松岡先輩がいる。
「ちなみに、
おめえらって2人って恋人同士か?」
「えっ、恋人?!いえ、あの、違っ…」
「まだですよ。
今、俺が猛烈に潤にアタックしてる最中なんで
あんまり余計なこと潤に話さないでくださいよ。」
「へぇ、猛烈にねぇ
ちなみに俺はここよりももっと田舎の
僻地でじいちゃんの診療所を引き継いでる。
翔とは、アメリカのヘリの免許取得時に
知り合ったんだぜ。」
まいったなぁ
松岡先輩は
めちゃくちゃ性格もいいし、面倒見も良くて
頼り甲斐はあるんだけど
酒好きでかなりのお喋り好きってところが
良いところでもあるんだが…
潤を横目で見ると、さっき服用した薬のおかげで
咳は治まってきてるようだ。
松岡先輩の話しに瞳を大きく見開いている。
まあ、そろそろ
潤にも俺のことを話さなきゃって
思ってたところだったし
タイミング的には悪くない。
それに第三者の松岡先輩の口から出る
言葉のほうが、潤には
より混じり気のない人となりとしての
櫻井翔が認識されるだろう。
この先、潤には俺への
不信感や、不安感、不満や疑惑、欺瞞を微塵も
抱かせたくない。
けど、潤の体調が最優先だから
まあ滞在するなら1時間程度だろうな。