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イラクサの棘

第22章 どこ




「え?いいの?」

「んなの、いいに決まってるだろ。
雅紀、今夜は美也子の代わりに
俺に付き合って飲めっ!」

「うん、呑んじゃう!
クフフ、じゃあ姉ちゃんの代わりに
智兄にじゃんじゃんお酌するね。」


潤に連絡がつかない
潤が今どこにいるのか
誰とどう過ごしてるのか
飛んでいってやりたいが
俺にはどうしてやることもできない

考えたってなにも始まんねぇし
自分に出来る事はなにもない無力感。

それらを誤魔化すには酒のちからを借りるのが
1番手っ取り早い。

雅紀との酒は、笑い上戸の泣き上戸。
俺にとっては心地良い酒飲み相手。
たまに飲み過ぎたときに
記憶を無くすこともあるけど
雅紀が面倒見てくれて、介抱もしてくれて
何から何まで世話してくれる。


「最近は、
雅紀と呑むほうが多くなってきたな。」

「そっかなぁ、えへへ…」

「なーんか、変な話、雅紀のほうが、
俺の嫁さんみたいだな。
晶の世話もして、俺の世話までさぁ。」

「そんなことないって。
姉ちゃんはしっかりした嫁さんだもん。
智兄もちゃんと晶のお世話してるよ。
最近は、個展のことがあるから
送り迎えとか俺がしちゃてるだけでしょ?」

実際、晶は雅紀によく懐いてて
保育園のママさん方から
雅紀が晶くんのパパさんって呼ばれたりする
こともあったりするそうだ。

勝ち気さが表情にでて凛としてる雰囲気の
キリッと美人の美也子より
雅紀のほうが、おだやかで優しい柔和な
眼差しをしてる。

実際の性格も正反対で
ガキの頃はよく、姉弟の性格が反対なら
良かったのにって言われたそうだ。

「姉ちゃんは、学級代表とか
生徒会長とかにも立候補してたもんね。」

「だったなぁ、
俺なんて毎朝、呼びに来られて引っ張って
学校まで連れて行かれたぜ。」

3人のガキの頃の思い出は
いつもあたたかで、共通する優しさと
安心感に包まれている。


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