イラクサの棘
第25章 踏み出す一歩
こういった田舎暮らしだと
古くからの因習やしきたり、地域性
なんかの人間関係も難しい部分もあるんだ
「東京からの旅行者らしき男が2人。
東京出身の岡田先輩と葵さんが経営する
牧場方面からやってきた。
おそらく彼等と関係性があるって考えるだろ。
そんな、よそ者の俺らが
頼み事を愛想もなく断ったら、
あの牧場の知り合いの
東京モンのヤツらわって
悪い印象が生まれちまうよな。
いわゆる、印象操作だよ、
岡田先輩の、あの牧場に訊ねてくる
客は悪いヤツじゃないってね。」
牧場の土地を譲り受ける時
地元のヤツらといろんな問題があったと
聞いていたからだ。
考え過ぎかもしれないが念には念をだ。
「俺、そんなことまで…全然ちっとも」
「だから、最初から富良野まで
一緒に乗せてく気持ちなんて無かったよ。
あの2人には悪いけど
俺の中では途中下車必須だったし。」
「でも、だって…会話だって…3人で
盛り上がってたし…」
きちんと潤の思い違いを訂正してやないと
俺が誰にでも気が多い男ってレッテルを
貼り付けられるのはごめんだ。
「そりゃ、
ウソが混ざってた作り話だからさ。
こっちだってテキトーにしか返して
なかったしな。」
「うそだったの?
だって女子大の話とか、授業だとか、
サークルとかって」
「あれはほぼ詐称だったよ。
一流のお嬢様大学に通ってるって
行ってたけど、ありゃ三流でたぶん通ってる
大学も都内じゃないな。」
大学の最寄駅の周辺の店の話や
教授の名前も間違えてたし、
サークル活動だって
おそらく三流大学での活動内容。
「必死に取り繕ったり、嘘を
重ねたりするのが、面白くってさ
つい、いろいろ質問してたんだよ。」