イラクサの棘
第25章 踏み出す一歩
呆れて開きっぱなしの唇に
吸い付くと、びっくりしたように
瞬きを繰り返したりする。
こういうところも、マジでかわいいんだよなぁ
「じゃあ、あの子たちは
最初から、相手にもしてなかったの?」
「当たり前だろ?
それよりも、潤の寝顔のほうが
俺には気がかりだったんだぞ?」
「なんで?俺、つまらなくって
眠りこんじゃったんだよ?
そこは、怒るところじゃないの?」
「フハッ!
おまえのかわいい寝顔をうっかり
見られたりしたら、肉食系女子大生
に狙われるんじゃないかって
内心、めちゃくちゃ焦ってたんだぜ。
だから、おまえのほうに意識がむかないように、
ずっとあの子たちと話してたんだよ」
「かわいいって…もう…
起こしてくれればいいだけじゃん」
「やだね、かわいい寝顔は
俺だって見てたいんだよ。
潤の、寝顔は俺が独り占めしたいから
さっさと別の車見つけて降りてもらったんだよ。」
耳まで真っ赤に染まる潤
こんな初心な感情表現するところも
寝起きの時のような
俺の股間で大胆に淫らな行為に及ぶときに
見せる妖しい眼差しも
どの潤もたまらなく魅力的だ。
「絵画と違うとか、
本物にはがっかりとかは?ないの?
俺は、その絵を見た事ないからわかんないけど
絵画のほうがきれいに描かれてて
なんか、違うよなぁって残念だとか思わない?」
ああ
また俺の言葉足らずってやつだな。
恋愛で傷ついて
潤の奥深くに刺さったままの棘
繰り返す傷みに
独り耐えて
その痛みを忘れるように努めて
感情を押し殺し、そっと1人で暮らしてきた。